大判例

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広島高等裁判所松江支部 昭和28年(ネ)98号 判決

「被控訴人は、原判決別紙第一目録記載の本件不動産につき、高田重治と被控訴会社との間に、賃貸借契約が締結された事実を根拠として建物については、借家法により、又、土地については、建物保護に関する法律により、いずれも引続きこれを使用し得る権利がある旨主張するところであるから、先ず、右賃貸借の存続期間に関する点について検討を試みよう。前顕乙第二号証の契約書中に「賃貸借ノ期間ハ予メ之ヲ定メス乙(賃借人たる被控訴会社)ニ於テ不用トナリタル時ハ何時ニテモ解約スルコトヲ得」との条項があるけれども、前顕各証拠によつて認められる諸般の事実、殊に本件買戻約款附売買契約が、谷岡政男、被控訴会社及び高田重治の三者間に締結されるに至つた経緯、事情及び右売買契約の内容たる各条項の趣旨に鑑み、当初、関係当事者間に谷岡政男の有する買戻権が適法に行使された場合、右賃貸借は当然に終了するものと定めることにつき暗黙の意思表示の合致があつたものと推断するに難くない。

然らば、前叙認定の如く、谷岡政男の買戻権に基く売買解除の意思表示により、買戻権が行使された時から、被控訴会社においても、谷岡政男のため、原状回復に協力すべき責任を負担するに至つたものといわなければならない。

従つて、原判決別紙第一目録記載の不動産のうち建物については、現に、被控訴会社が引渡を受けて使用中であるということを理由として、被控訴会社は依然賃借権を有するものとなす被控訴人の主張は、当然にはこれを是認し難いところであるが本来、買戻権に基き、適法に売買の解除がなされた場合、目的不動産は、売買契約の時に遡つて、売主の所有であつたことに帰着し、買主からその不動産を賃借した者の賃借権も、その存立の基礎を失つて消滅するに至るから、本件において、被控訴会社は谷岡政男の買戻権行使の時から、本件建物に対する賃借権そのものを有せざるに至つたものというべく、借家法による保護に関する被控訴人の主張の当否を判断する余地がない。

次に、被控訴会社が本件土地の上に築造せる原判決別紙第二目録記載の建物につき、昭和二五年六月三〇日保存登記がなされたことは、成立に争がない乙第三号証によつて明らかである。(ただし、一、木造枌葺平屋建事務所一棟建坪一六坪五合以外の分は、建物の表示が異る)即ち、右保存登記は、本件買戻期間中、而かも、谷岡政男の買戻権行使の時以前になされたものであるけれども、右保存登記の有無を問わず、被控訴会社の本件土地に対する賃借権も、谷岡政男の買戻権行使の時から、消滅するに至つたものと解すべきことは、前段における説示によつて、自ら明らかである。凡そ不動産の賃借人が借家法第一条建物保護に関する法律第一条等によつて保護を受け得るのは、当該賃借権が有効に存在している場合にのみ限られることは、更に、贅言を要しない。」

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